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多様な人材を備えた保育園へ

2018.09.28

保育園は保育士と調理員、あと園長先生ぐらいで成り立っていると思っている人が多いのではないでしょうか。事務員が要ることに想像がおよぶ人はいるでしょうが、30年ぐらい前からの子育て状況の変化と保育園の社会的役割の広がりに伴い、上記の職員だけでは行き届いた業務を実現することが難しくなっているという現状を認識している人は少ないでしょう。保育園は多様な人材が必要な事業になっているのです。

保育園の社会的役割の広がりは子育てを取り巻く社会状況の変化と連動しています。子育ては「家庭」と「地域社会」と「保育園・学校等の受け入れ施設」によって担われてきました。これら3つの領域のバランスの変化が子育て状況に大きな変化をもたらしています。家庭は核家族化が進み、祖父母世代の子育てへの参加が難しくなり、各家庭がもつ子育て能力の縮小が起こっています。地域社会では子どもが自由に、そして安全に遊べる場所が減少し、子どもが育まれる様々なかかわりを含め、地域ぐるみで子どもの育ちを支える営みが縮小しています。この2つの領域が縮小する分、保育園等の子育てにかかわる事業所の社会的役割の拡大が求められているのです。

保育園の社会的役割の拡大は、単に多くの人員が要るということではなく、今まで保育士が求められていた領域を超えて、多様な能力が求められることを意味します。例えば『保護者支援』を取り上げてみても、保護者がどのような生活状況・子育て状況にあり、どのようなことを求めていて、どのような対応が可能か、どのように支えていくことがより良い支援になるのかなどと考え、実践していくことは、熟練したソーシャルワーカーの能力が必要になります。大学を出て数年の保育士がそれを担えるはずもありません。ある程度の経験をしてきた保育士も、そもそも保育士として身につけてきた技量では到底対応できない領域であるだけでなく、多くの場合ご自身が子育て真っ最中であり、大きな責任を負うことが難しいという現状があります。

保育園が求められる領域は多岐にわたっています。名称を列挙するだけにとどめますが、保護者支援以外にも『子育て支援』『子どもの発達支援』『児童虐待の防止』『小学校との連携・接続』『学童保育との連携・接続』『食物アレルギー対応』『感染症対策』など、それぞれに高度な見識と技能が必要で、研修を受けたぐらいでは対応できるようにはなりません。加えてそれらが全て絡み合っているわけですから、総合的に対応していくためのマネジメント能力が求められます。

この現状を踏まえると、保育園は保育士という同じような学びの過程、経験、関心、技能をもつ同質的な集団を脱し、多様な領域に対応できる多様な人材を備えた事業所に生まれ変わる必要があります。そのためには保育園が『保育士が勤めるところ』という社会的認識を変えていくことが不可欠です。現状では保育士養成校や大学の保育科で学んでいる人以外は自分の就職先として保育園は視野に入っていないでしょう。しかし上記したように、少なくとも大久保保育園は多様な人材が必要だと考え、それを求めています。「人とかかわることを仕事としたい」と思う人であれば、これから保育園では貴重な役割を担う人材になっていくでしょう。保育園の未来は多様な人材が集まる『地域社会の子育て拠点』へと向かっています。